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導入事例

株式会社松永製作所

3次元データ資産を活かしテンプレート設計を実現
多彩なオーダーメイド車いすをスピーディに提供

Autodesk Inventor Professional を核に3次元設計をフル活用 金属探知器に反応しない、オール樹脂製車いすの開発に成功

Autodesk Inventor Professional を核に3次元設計をフル活用
金属探知器に反応しない、オール樹脂製車いすの開発に成功

Autodesk Inventor Professional を核に3次元設計をフル活用
金属探知器に反応しない、オール樹脂製車いすの開発に成功

オール樹脂製車いすを3次元設計で

2016年4月、羽田空港に全く新しい空港・機内用車いす「morph 〔モルフ〕」が導入された。モルフは国内有数の車いす製造・販売メーカーである松永製作所が、大手航空会社と共同開発したオール樹脂製車いす。もちろん羽田空港には以前から車いすが用意されているが、そこには多くの課題があった。特に搭乗前の金属検査である。

「車いすで検査場を通ると金属部分に探知器が反応するため、利用者はボディチェックを受けざるを得ません。そんな不便や負担をかけたくないと、航空会社から相談を持ちかけられたのです。」開発部の部長である日比野氏はそう語る。

もちろん健常者も障害者も、ゲート通過時の保安検査は欠かせない。しかし、車いす利用者はルールを守っていても負担を強いられ、渋滞の原因にされかねない。
「金属探知器に反応しない車いすがあればこの問題は解決できます。カウンターで乗り換えていただいて検査場を通り、そのままスムーズに飛行機に乗り込める、それが航空会社の要望でした。金属探知器に反応しないことを大前提とした設計が求められたのです。」

スチールやアルミ製が一般的な車いすのボディを非金属素材で作るには、まず十分な強度を備えた非金属素材が必要となる。素材試験を繰返し行い、試行錯誤の果てに行き着いたのが樹脂材だった。
「樹脂部品を使う車いすは他にもありますが、ボディ全てが樹脂のものは前例がありません。」(日比野氏)

しかし、空港専用の車いすとはいえ、通常の車いす同様の走行耐久性は欠かせない。JIS 規格に準拠した安全性能試験をクリアするため、樹脂製ながら金属並の構造強度を持つ設計が求められた。また、空港カウンターから飛行機内まで乗り換えずに行けるように──という、もう一つの要望に応えるための工夫も必要だった。通常、航空機内は車幅の狭い機内専用車いすでなければ移動できないのである。そこで大車輪を着脱して幅を狭め、そのまま機内に乗り込み座席まで行き着ける仕組みを考案した。

このように、モルフは車いすとしてきわめてチャレンジングな製品だった。そのため日比野氏らは、当初から開発に同社として初の設計手法を採用した。Autodesk Inventor Professional (以下 Inventor)による3次元設計である。

「実は2003年頃には、当社もすでに Inventor の活用を開始していましたが、図面自体は AutoCAD による2次元図面を用いていました。その後、3D プリンターと連携させて樹脂の形状確認を行ったり、ビジュアライゼーションで取扱説明書用の CG 画像や部品の展開図を作るなど、徐々に3次元データの活用を拡げ、2010年には構造解析も始めていました。
そして昨年、モルフの設計でいよいよ全面的に3次元設計を用いることになったのです。」(日比野氏)

株式会社松永製作所
代表取締役社長
松永 紀之 氏

株式会社松永製作所
開発部 部長
日比野 民智 氏

株式会社松永製作所
開発部 技術課 課長
傍嶋 宏和 氏

株式会社松永製作所
開発部 開発課
廣瀬 昌之 氏

株式会社松永製作所
開発部 技術課
高田 昌明 氏

Inventor のデータ資産や高度な設計ノウハウを集約
ボタン一つで3次元モデルや各種図面を自動生成するテンプレート設計を活用

データ資産を活かしテンプレート設計へ

こうして約3年に及ぶ開発期間を経て完成したモルフは、前述の通り2016年春に発表され、日本初のオール樹脂製車いすとして大きな注目を集めた。2016年のグッドデザイン金賞など幾多の賞も受賞し、発注元の航空会社は64台を羽田空港に導入。さらに順次全国の就航空港へ展開していく計画としている。まさに松永製作所が長年蓄積した車いす作りの技術とノウハウが、Inventor による3次元設計を活かすことで大きく開花したのである。

「実際、3次元設計移行のため、Inventor はもちろん、Autodesk Vault も使って昨年からいろいろな準備を進めてきました。いまやそれらがさまざまな成果を上げ始めています。」そう語るのは同社の3次元化を主導する開発部技術課の傍嶋氏である。「従来、当社ではInventor で作った3次元データをフォルダ方式で管理していました。そのためフォルダごとに同じ図面が大量に保存されていました。」その結果、必要な図面を探すのに手間がかかり、僅かな仕様変更で拘束が崩れる等のトラブルも起きていた。そこで設計の3次元化を機に Vault を用いた新しいデータ管理体制を作ることになったのである。曖昧だった品番ルールや図番ルール、検図・承認・保存の流れを整理して共通ルールを定め、Vault を駆使し品目体系を構築し直していった。

「図面も一つ一つ見直して設計資産を再構築したのですが、結果としてそれがモルフに続く新製品に結びつきました。Inventor のデータ資産を活かし、以前から挑戦していたテンプレート設計を実現し、それを応用したアクティヴユーザー向けのカスタムメイドの車いす“MP カスタム(” ※)です。(」傍嶋氏)

羽田空港に64台の「モルフ」が導入

モルフの大車輪着脱の仕組み

テンプレート設計の入力画面

いつの時代もお客様のためになる製品づくりを

松永製作所のMP(MAX PERFORMANCE)シリーズは、車いすに乗ってスポーツを楽しむ活動的なユーザーに向けたスポーツタイプの車いすである。スタイリッシュなデザインと軽量ボディで高い人気を誇り、2015年のグッドデザイン賞も受賞している。

「MP シリーズのもう1つの特徴は、使用ユーザー個々に合わせて採寸し、それに合わせて製作する一品生産であることです。」そう語るのは MP カスタムの開発を担当した開発部の廣瀬氏だ。つまり、一品仕様とすることで通常の車いすに必要なアジャスト機構等を排し、大胆な軽量化を実現したのである。だが、一品仕様の治具レス製作では、新規オーダーの度に、作図し直す必要がある。ベテラン設計者でも、その図面作成には1週間近くかかってしまうのだ。そこで蓄積したInventor のデータを活かしたテンプレート設計で、この作図納期を短縮しようというのが傍嶋氏らの狙いだった。

「テンプレート設計のシステム自体は、仕様を決めて、Inventor でテンプレート設計しやすい3次元モデルを構築し、大塚商会の協力を得て3カ月ほどで作りあげました。顧客データを元に Excel に主要寸法を入れて実行ボタンを押せば、5分で3次元モデルまで完成するという仕組みです。」(傍嶋氏)さらにそこからお客様用図面や組立図、溶接図、加工図など製造用図面もボタン一つで自動生成され出力される。狙い通り、テンプレート設計の実現により作図納期は大きく短縮されたのである。

「設計者の負担が減るのはもちろん、お客様にいち早く形状を確認いただけ、製作用図面もあらかじめ用意できます。お客様へのご提供もかなり短縮できています。」
そう語るのは開発部技術課の高田氏だ。テンプレート設計のメリットとしてもう一つ見逃せないのは、そこに同社の設計ノウハウが集約されている点である。ユーザーに合わせたオーダーメイドで、しかも治具なしで製作されるこの製品は、作図にも高度な設計ノウハウが必要だ。熟練した担当者にしか作図できないケースもしばしばで、他の技術者にやらせるには改めてトレーニングを受けさせる必要があるのだという。

「そうした熟練者のノウハウをモデル上に全部入れこんだのが、このテンプレート設計なのです。極論すれば、これまで熟練者しか扱えなかったような製品を誰でも作図できるようになったのです。この効果は非常に大きいと思います。」(傍嶋氏)

こうしてテンプレート設計によるカスタムオーダー車いす「MP カスタム」 は、かつてないきめ細かなサイズ展開と44色ものカラーバリエーションを実現。2018年春の発売へ向け、準備は最終段階へ差しかかっている。
また、空港・機内専用車いす「モルフ」には他の航空会社からの引合いが増えているほか、オール樹脂製の特徴を生かし、オリンピックなど大規模イベントのセキュリティチェック対策や、磁性体を嫌うMRI 検査室などの医療用途など新たな可能性が検討されている。もちろんこうした動きに合わせ、 Inventor を核とする3次元設計への完全移行も着々と進行中だ。日比野氏は語る。

「いつの時代もお客様のためになる製品づくりが私たちの第一原則。だからこそ市場ニーズをいち早く捉え製品作りに反映させることが、常に変わらぬ目標です。Inventor や Vault 等をさらに活用しながら、そんな製品作りを的確に、効率的に、進めていきたいですね。

*:製品リリース前のため仮称:2017年10月時点

MP カスタムの多様なサイズ展開

車いすバスケットボール用「B-MAX」

会社名:株式会社松永製作所

所在地:岐阜県養老郡養老町
ソフトウェア:Product Design & Manufacturing Collection

1974 年に誕生した弊社は、いまや車いすの生産販売量で国内有数の車いすメーカーとなっています。現状では日本国内の展開が中心ですが、「健康で長生きしたい」という願いは人類共通のものであり、当社の技術やノウハウも世界で役立てられるはずです。そして、さまざまな国でものを作り販売していくには、よりグローバルなコミュニケーション力がカギ。その意味で、3次元製品をますます活用することで、まずはアジアナンバー 1 の車いすメーカーへ。そして、いずれは世界も目指したい──そう考えています。

松永 紀之 氏
株式会社松永製作所
代表取締役社長

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